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Found in Interpreting

通訳・英語教育・時事などについて書いています

機械翻訳・通訳

https://iotnews.jp/archives/56049

 

マイクロソフトがイベントで、Presentation Translatorというのを発表したそうです。機械翻訳・通訳もどんどん精度が上がってきているようですが、通訳の仕事もテクノロジーによって置き換えられてしまうのでしょうか?

自分で外国語を話さない人は、日本語と英語が直訳で置き換えられると思っていることがあるので、よく「通訳の仕事もなくなっちゃうんじゃないの?」と言われることがあります。少しでも外国語をかじった人であると、「翻訳はともかく、通訳はなくならないんじゃないの」という人が多いです。

自分の仕事が機会に置き換えられると言われて、いい気持ちがする人はいないでしょうが、技術の進歩で何が起こるか、ということは誰にもわかりません。

機械翻訳は、かつては実際の文法を機械に教えて、人間と同じプロセスで言語を理解させ、翻訳を試みていたそうなのですが、機械にとって文脈を理解して、代名詞が何を指しているのかを理解するということはとても難しく、その部分ではほとんど進歩が見られないそうです。ただ、最近では、この単語とこの単語が一緒に使われていたら、おそらくこの意味、といった、確率論を使うようになり、精度がぐんと高まっていると聞いたことがあります。人間が言語を話すプロセスとは違うのですが、こちらのほうが訳がより正確になるそうです。同じ内容の文書を複数の言語で機械にインプットして、AIだかディープラーニングとかいうもので機械が学ぶのだそうです。

翻訳はなんとなく意味が分かればいい、というものであれば、機械翻訳で済ませているケースも増えているでしょう。ただ、対外的に出すものであれば、最終的には人間がチェックする必要があるので、翻訳者の仕事がなくなるというよりは、機械との協働が増えるということになっているのではないかと思います。

通訳について言えば、同時通訳ブースが発明されたり、パナガイドが出てきたことによって、逐次通訳だけではなく同時通訳が可能になったという影響はありますが、通訳そのものの作業を機械が代替している、ということは会議通訳の分野ではなさそうです。医療現場など、やり取りする内容が決まっている場面では、タブレットを使ったりして機械が通訳をしていることもあるようですが、商談や国際会議などの通訳を機械がやるというのは、なかなか想像できません。

 

会食

会食の通訳の仕事も結構あります。自分も食べながら通訳をする場合もありますし、食べずに要人の後ろについて通訳に専念する場合もあります。内容としても単なる雑談のようなものの場合もあれば、ビジネスなどの固い話をする場合もあります。通訳に専念するような場合は、逐次でも同時でもメモ帳や資料(あれば)、辞書を手元において、かっちり訳した方がいいでしょうが、自分も食べるような場合はあまり手元にメモ帳やら電子辞書やら抱えているのもみっともないような気がします。ただ食材は、前もってメニューを知らせてもらえなかった場合、調べる必要が出てくる場合もあるので、辞書はいるかもしれません。ただ、スマホでいいかもしれませんね。

食材は、そもそも日本でしか食べないものもあるので、きちんとした英訳がない場合もあります。山椒などはJapanese spice、みょうがはJapanese gingerなど、がっかりする訳語が辞書をひくとあてられています。だいたい外国人と食事をする場合は、ベジタリアンやハラル、アレルギーなど、食べ物の制限は前もって伝えてあるので、最近はあまり気にする必要もなくなりましたが、場合によっては移動中などにちょっとその辺で食べるということもあります。少なくとも何の肉なのか、あるいは魚なのかなど、ざっくりとでも伝えてあげることが大事です。

私も通訳を始めたばかりの頃は、とにかく通訳というのは一言一句、全て訳さなければいけないものだと思っていましたから、会食のような席でも全てメモを持って訳し、自己満足に浸っていましたが、コミュニケーションの内容よりもコミュニケーションをしたという事実のほうが大事な場合もありますし、そのまま文字通り訳したのでは場が盛り上がらないこともあります。また、外国人の扱いに慣れているクライアントであればいいですが、そうでない場合は外国人に話しかけるのは気がひけるらしく、通訳者に話しかけてくるような場合もあります。答えはありませんが通訳者が話題を提供したほうがいい場面もあるかもしれません。

通訳者を使うことに慣れている人は、逐次通訳であってもあたかも通訳者が存在しないかのように相手に向かって話しかけます。慣れていないと、Can you tell them~のように、毎回通訳者に依頼形式で話しかけてくるクライアントもいます。同時やウィスパリングであれば、通訳者は離れたところにいる場合もあるので、そのような話し方ではなくなります。

 

肩書き

通訳をしていて難しいのが、肩書きです。社長、専務、常務、部長、課長などは一般的な表現ですが、同じdirectorでも取締役だったり、部長だったり、課長だったりと、知らなければどうしようもありません。また、日本人の肩書きは〜部〜課〜担当などと長いのが特徴。英語では長々と自分の肩書きをいうことはあまりありません。

最近では部署の名前もかっこよく言い換えてあるものが多いです。例えば人事であれば、もっとも一般的な表現はHuman Resources (HR)でしょうが、先日ネットフリックスで見た「マイ・インターン」では、退職後にオンラインショッピングの会社でインターンを行う登場人物が、Talent Acquisitionという表現を聞いて肩をすくめる場面があります。デザートというのに飽きてきたので、スイーツというようなものでしょうか。

営業なども、sales representative、もしくは単にrepとだけいうのが一番簡単ですが、最近ではclient managerとかaccount executive、なんとかconsultantといったカッコよく聞こえる名前が跋扈しています。惑わされずに、「これは要するに営業のこと」「この人はコールセンターの人」のように整理しながら聞くことが重要です。

最近ではお役所などの人の名刺の裏には英語が印刷されている場合もあるので、ちょくちょく見て訳を確認しています。ただ、年功序列の職場の場合、管理職でなくても「主任」のような肩書きがとりあえず付いている場合があります。意味がない場合もあるので、あまり深く理解しようとしてもうまくいきません。

また、CEOとCFOくらいは以前からよく聞かれる肩書きでしたが、最近ではCMO(Chief Marketing Officer)とか、CTO(Chief Technology Officerのように)CXOという役職も増えました。このようにCなんとかオフィサーという役職がついている人たちは役員レベルなので、役員になることを「C-suiteに入る」と言ったりするようです。

会社というのは組織改革が好きなようで、通訳の仕事でもしょっちゅう「組織がこういう風に変わりました」という内容を訳します。そして数ヶ月経つと、またトップが変わって、また組織改革をやっています。一時的にトップから覚えめでたくなって、権限を与えられたのもつかの間、トップが変わり名ばかりのものになってしまう部署など、栄枯盛衰です。

TIME

英語の雑誌といえば、日本ではThe EconomistよりもTIMEのほうがよく知られています。小松達也先生の著書にも、TIMEを愛読されていることが書かれています。

今日はあるホテルで仕事だったのですが、早めに着いたのでロビーで時間を潰していたところ、TIMEが何冊か置いてあったのでぱらぱらとめくってみました。最新号は5月1日付で、毎年恒例であるTIME100の特集号でした。世界でも最も影響力のある100人をTIMEが選んでいるのです。今まであまり気をつけて見たことはなかったのですが、PIONEERS, ARTISTS, LEADERS, TITANS, ICONSの5つのカテゴリーで合計100人が選ばれていました。

日本人で選ばれていたののは唯一、小池都知事のみ。女性初の都知事であることからか、カテゴリーはPIONEERでした。

最新号は特集だったので、その前の号も見てみましたが、The Economistとはだいぶ様相が違います。まずTIMEのほうが薄いですし、記事も単語が簡単で、読みやすい。そこまでしっかり読んだわけではないので、単なる感想ですが、やはりアメリカの雑誌であるためか、アメリカを中心に世界ニュースを取り扱っている感じがしました。The Economistはイギリスの週間紙ですが、イギリス専用のセクションがあるところを除いては、そこまでイギリス寄りな感じではありません。The Economistのほうが守備範囲が広い感じですね。

とはいえ、英字新聞や雑誌の類は、自分の好みに合ったものを読むのが一番です。どの雑誌でも、主要なトピックは大体カバーしていますし、論調の違いこそあれ、英単語などは学べます。私の周りにも、Asahi Weeklyなどを読んでいる人がいます。日本の新聞社が出している英字新聞は、英語学習のために購読している読者のことも意識してか、単語リストが載っているものなどもあります。

私もJapan Timesなど、日刊の英字新聞を読もうとしたこともありますが、日刊紙は分量が多すぎます。日々のニュースはもっぱらポッドキャストなどでカバーして、The Economistで背景知識を入れたり、どのような単語・表現が使われているのかを確認するというのが、私のここ数年のスタイルです。

 

http://time.com/collection/2017-time-100/4742712/yuriko-koike/

Strangers for Hire

BBC World Service - The Documentary, Strangers for Hire

 

私はテレビを持っていないので、ニュースはもっぱらポッドキャストで聞いているのですが、今朝のBBC Worldのポッドキャストで面白いドキュメンタリーが紹介されていました。今は色々なものを、自分で所有するのではなくレンタルすることが流行っています。一昔前であれば、車も家も所有したいと思っていた人が多かったようですが、今は若者は車も家もみんなが欲しがっているわけではありません。車であれば、日本ではいわゆる白タクにあたり、規制がかかっているのであまり利用できませんが、ウーバーがあります。私も何回か利用したことがあります。

さらに、Airbnbでは使っていないアパートなどを貸し出すことができます。私は利用したことはありませんが、なかなか快適でホテルよりも安いようです。日本では今は民泊のルール作りが議論となっていますね。

このように、自分が使っていないものを貸し出して対価を得ることを、シェアリングエコノミーと言います。ウーバーとAirbnbが非常によく例としてあげられます。

さて、冒頭の面白いドキュメンタリーについてですが、今は日本で友達を貸し出すサービスというのがあるそうで、取り上げていました。日本人は対面でのコミュニケーション(電話でもですが)が得意でない人もいるので(socially awkward)、友人をレンタルして、話を聞いてもらったりするそうです。また、ソーシャルメディア(日本語ではSNSという表現のほうが一般的ですね)の投稿にいいね!をつけてもらったりもするそうです。

私はカラオケでも焼肉でも今では臆せず1人で行きますが、確かにかつては恥ずかしいものがありました。歳をとって鈍感になってきたのかもしれません。

音声だけのドキュメンタリーなので、スマホで移動中にでも聞いてみてはいかがでしょうか。ところどころ日本語も聞こえてくるので、内容もわかりやすいと思います。おそらくBBCのレポーターが通訳者を雇ったのかもしれません。プロかどうかわかりませんが、通訳者とおぼしき女性の声も聞こえてきます。

いずも

「いずも」が新安保法制のもとで米軍の護衛をすることになりました。この「いずも」ですが、NHKの英語ニュースではdestroyerとなっています。日本語では「護衛艦」になっているのですが、destroyerを日本語に直訳すると、destroyなので「駆逐艦」のほうがしっくりきますね。なんだか物騒な名前です。

軍事用語などは、翻訳が少しずれていることがあります。意図的なのかもしれません。例えば自衛隊はSelf Defense Forces(SDF)ですが、BBCなどではJapanese armyと呼ばれているのを聞いたこともあります。日本には平和憲法があるので、軍はなく、あくまで「自衛隊」ということになっているのですが、諸外国は自衛隊を日本の軍だと捉えているということですね。

また、wiretappingのような表現なども、頭にすっと入ってくる翻訳は「盗聴」だと思いますが、実際は「通信傍受」のような訳語が当てられています。当局が捜査の一環としてwiretappingを行うこともあるのでしょうから、「盗聴」というのは聞こえが悪いのかもしれません。

日本の防衛省に当たるのは、米国では国防総省ですが、呼び方は複数あります。アメリカの省庁はministryとは呼ばれず、departmentが使われます。国防総省であればDepartment of Defense(DoD)ですが、ペンタゴンと呼ばれることもあります。このように名詞を言い換えるのは英語独特の現象で、日本語でこれをやると聞き手を混乱させるので、通訳するときも場合によっては統一した方が分かりやすくなります。ちなみに日本の外務省に当たるのは国務省、state departmentです。日本では各省のトップは大臣、ministerですが、アメリカでは長官、secretaryです。イギリスではministerとsecretaryのどちらも使うようです。このような大臣職は、国によって違いがあるので注目してみると面白いです。たとえば日本には復興大臣や一億総活躍大臣のような独自の大臣がいますが、国によっては家族大臣や女性大臣、石油大臣に宗教大臣といった「なるほど、この国であればそういう大臣がいてもおかしくないかも」という大臣職があります。

ちなみにEUには外交・安全保障上級代表というのがいて、簡便に「EU外務大臣」と説明されることがあります。イギリスにはBrexit担当大臣もいます。

名前

私は毎日仕事で色々な人と会いますが、名前を呼んでもらえると感激します。通訳者は医者や弁護士と同じで、「通訳さん」と呼ばれることが多いからです。専門職であるので、「通訳さん」と呼ばれることは、アイデンティティでもあるのですが、休憩時間などにわざわざ名前で呼びかけてくれると、驚きますがうれしいものです。フリーになる前は社内通訳者をやっていましたが、そこではいつまでたっても「通訳さん」と呼んでくる人もいました。「派遣さん」と同じ扱いですね。かくいう私も、人の名前をなかなか覚えることができないので、反省しなければなりません。

ちなみに英語ではよく相手の名前を呼びます。手紙などの宛名も名前を最初に書くのが英語ですから、やはり所属している組織などより個人に焦点を当てるのかも知れません。名前を聞いた後は、随所で名前を使って相手に呼びかけるのも1つのコミュニケーション手段なのでしょう。

英語では気軽にファーストネームで呼び合うのが普通だと思うかも知れませんが、実は苗字にきちんとMrやMsなどをつけて呼んだ方が無難です。相手が博士号を持っている場合はDrとつけます。大学教授などで博士号を持っていなければProfessorで呼びかけるのがいいでしょう。相手からCall me (first name)と言ってもらえるまでは、きちんと苗字にタイトルをつけて呼ぶほうが無難です。もちろん、カジュアルな場で会った人であれば、そもそも自己紹介のときに相手がファーストネームしか言わないこともありますから、その場合は下の名前で読んで構わないと思います。

逆に、日本人の名前は難しいので、自己紹介をしたあとに発音の簡単なニックネームを付け加えるものいいでしょう。Please call me Takaなど、発音しやすいものを教えてあげれば、相手が名前を覚えてくれるかもしれません。やはり顔と名前が一致している人に愛着が沸くものですから、周りより頭1つ抜きん出られるかもしれません。

私は通訳のときは、重複している情報や、文脈からわかる冗長な部分は落として訳にメリハリをつけることもあるのですが、名前の呼びかけがあった場合は、なるべく訳に含めるようにしています。相手の名前を覚えて呼びかけたということは結構意味があることだと思うからです。といっても、名前は中国人などの場合をのぞいて何語でも一緒ですから、お互いの言語がわからなくても名前を呼ばれたことは分かるのでしょうが。